お医者さんの話
昨年12月21日の出来事。子供がおもちゃのお面を被って遊んでいる最中に、耳が痛いと言い出した。お面を外してやり、「まだ痛い?」と聞くと、「もう治った」と言うので、そのままにしておいた。
その日の夜11時過ぎ、それまでぐっすり眠っていた子供が突然、「耳が痛い」とわめきながら、激しく泣き出した。妻が抱いても、いっこうに泣き止まない。
昼間、「耳が痛い」と言っていたこともあったので、夜間緊急病院に電話してみた。耳鼻科の診察は、夜12時までとのこと。その時間を過ぎると、専門医が帰宅してしまうというのだ。小児科なら翌朝6時まで診察しているのだが、小児科医では耳の中までは診察できないという。子供は、痛みのあまり、布団の上で転げ回っている。急を要することと思い、夜間緊急病院に連れて行くことにした。
12月21日深夜:夜間救急病院
車を飛ばして病院に辿り着いた時には、耳鼻科の診察が終了していた。専門外なことを承知で、一応、小児科の先生に診てもらった。この先生には、非常に親切な対応をしていただいた。小児科医のため、本来であれば、耳の中までは診察しないのだが、できる範囲で、耳の中を見てくださり、「耳の中に水が溜まっていますので、明日必ず、耳鼻科に連れていってください」とのことだった。
12月22日:1件目の病院
日曜日だったため、近所で対応している耳鼻科はなかった。隣町の、休日診療センターの耳鼻科に連れていった。そこでの病院の診察には、驚いた。
前日、水が溜まっていると診察を受けた右耳は、「何の異常もない」の一言で終わり。痛がる耳とは逆の「左耳に耳垢が溜まっているのでそれを取った後、近所の耳鼻科で左耳の鼓膜をチェックしてもらって」とのことだった。右ではなく、左の鼓膜をチェック!?前日の病院では、右耳に水が溜まっていると言われ、子供がしきりに痛がるのも右耳。私も妻も納得がいかなかった。だが、ここで医者とケンカをしても仕方がないと思い、妻と相談して、別の病院に連れて行くことにした。
12月22日:2件目の病院
まさか1日で2件の病院にいくとは思っていなかったが、私も妻も1件目の病院の医師は信じられなかった。誤診だと確信していた。放置して、鼓膜に異常が起きたり、悪化してはいけない。耳の中のことは、見た目にはよくわからず、素人には全く判断できないのだ。
知人に、子供の頃の中耳炎をこじらせて、片方の耳が聞こえなくなってしまった人もいる。万が一のことがあってはならない。今度こそ、どうか確実な治療が受けられますようにと、また車を飛ばす。
2件目の先生は、「右耳は、間違いなく中耳炎です」と、きっぱり言った。この病院は、休日診療ということで駆け込んだのだったが、同じ市内とはいえ自宅から通うには遠すぎた。1件目の病院よりも遠い。「痛み止めで様子を見て、連休明けに、近所の耳鼻科でもう一度、受診してください」とのことだった。
妻が、「今日最初に行った病院では、異常なしと診察されたんですよ」と言うと、先生は、「えっ」と首をかしげてしまった。この先生は、年齢は20代だと思われるが、治療も適切で、こちらの疑問にも対応よく答えてくださり、この先生に診察してもらったおかげで、多少安心して連休を過ごすことができた。
12月24日:近所の病院
「右耳は完全に中耳炎」という診断。結局、悪化してしまい、耳の中に膿がたまっていたらしい。
「鼓膜のところが膿でベロンベロンだよ」という先生の言葉に、妻はゾッとしたと言う。
年末年始の休診期間が迫っていたため、すぐその場で、鼓膜を切開して、膿を出してもらった。
痛み止めを含む、何種類かの薬を処方された。家での過ごし方や、休診期間に悪化した時の対処の仕方など、細かく指示をいただいた。
この日、私は仕事で、妻が一人で子供を病院に連れて行ったのだったが、先生の「連休前にできることは全てやりました。薬も、出せるものは全て出してあります。切って膿を出したから、今夜からは眠れるようになると思いますよ」という言葉に、妻は心からホッとしたという。
実際、それまで夜中に痛みで泣いて起きてしまった子供は、その夜からぐっすり眠れるようになったのである。そしてその翌日からは、痛み止めも使わずに過ごせるようになった。
先生の説明によると「中耳炎は、3週間前後は投薬などの治療が必要な病気」とのこと。大事に至らず、昨年秋に引っ越してから初めての耳鼻科探しで、近所の病院に信頼できる先生を見つけることができて、ラッキーだった。
その数日間は、親子3人、夜もほとんど眠れない、耳鼻科騒動だった。テレビなどで、誤診の問題が取り上げられることがあるが、まさか耳鼻科で、中耳炎を診察できない専門医がいたということは、頭にくると言うより驚いてしまった出来事だった。
医者の判断や、診察中の言葉で、患者側の気持ちや行動は様々に揺れ動いてしまう。もし、1件目の医者の診察を鵜呑みにして、次の病院へ走らなかったら? そのまま放っておいたら「鼓膜のところがペロンべロン」にまでなってしまった子供の耳は、どうなっていたのだろう。知人のように、聴力を失ってしまう可能性もあったのではないかと思うと、今でも恐ろしい。
今回の事で、私も色々考えさせられた。文中、「専門医」という言葉を何度か使ったが、専門家という立場で物事を考えると、私も「社労士という専門家」なのだ。労務相談の中で、企業の方針を左右する発言も多々あるのではないか。改めて、その責任の重さを感じた。
ところで、子供の中耳炎だが、1月上旬に完治した。